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JavaScriptのSymbol完全ガイド|基礎から実践まで徹底解説

目次

はじめに

JavaScriptには「文字列」「数値」「真偽値」などの基本的なプリミティブ型がありますが、ES6で導入された Symbol は少し特別な存在です。普段の開発ではあまり目立ちませんが、オブジェクトの拡張やライブラリ設計において強力な武器になります。本記事では、Symbolの基本から応用、実務での活用方法までを体系的に解説します。

イティセル/コード専門官

要するに、プリミティブ型の隠れキャラとも言えるでしょう。  
表のキー一覧には現れませんが、オブジェクトの裏側では確かに存在し、しっかり動作しています。

1. Symbolとは何か

プリミティブ型といえば、string や number、boolean などが代表的ですが、Symbolはそれらと同じ「基本型」でありながら、少し異なる役割を持っています。

最大の特徴は、生成するたびに必ず一意の値になる という点です。たとえば Symbol() を2回呼び出すと、見た目が同じように見えても、内部的にはまったく別の値が作られます。

const a = Symbol();
const b = Symbol();
console.log(a === b);
リクナ / JavaScript統括官

false

実行結果
false
イティセル/コード専門官

簡単にいうと、Symbolは同じ説明を与えても決して一致しません。見た目は似ていても、互いに相容れない存在です。
いわば「同じ旗を掲げていても決して同盟しない独立国家」のようなもの。だからこそ、オブジェクトのプロパティキーとして使ったときに衝突を避けられるのです。


さらに、Symbolには「説明(description)」を付けることができます。これはデバッグやログ出力の際に識別しやすくするためのラベルのようなものですが、説明が同じでも値そのものは別物 です。

const a = Symbol('id');
const b = Symbol('id');
console.log(a === b);
リクナ / JavaScript統括官

false

実行結果
false

2. なぜSymbolが必要なのか

2.1 プロパティキーの衝突回避


オブジェクトにプロパティを追加するとき、文字列キーを使うと他のコードと衝突する可能性があります。たとえばライブラリや外部コードが同じキー名を使っていた場合、意図せず上書きされてしまう危険があります。

イティセル/コード専門官

これはまるで、惑星と惑星が衝突して新しい惑星になってしまうようなものです。名前が同じだと、どちらか一方が消えてしまうのです。

const ID = 'id';
const user = { name: 'Taro' };
user[ID] = 123;

console.log(user);
リクナ / JavaScript統括官

{ name: ‘Taro’, id: 123 }

実行結果
{ name: 'Taro', id: 123 }

ここで Symbol を使えば、同じ「id」という説明をつけても必ずユニークなキーになるため、衝突の心配がありません。

イティセル/コード専門官

Symbolを使うと、惑星同士がぶつかっても融合せず、それぞれ独立した存在のままでいられるのです。

const ID = Symbol('id');
const user = { name: 'Taro', [ID]: 123 };

console.log(user[ID]);
console.log(user); 
リクナ / JavaScript統括官

123
{ name: ‘Taro’, [Symbol(id)]: 123 }

実行結果
123
{ name: 'Taro', [Symbol(id)]: 123 }

2.2 列挙されない「隠しプロパティ」

通常、オブジェクトのプロパティは for…in や Object.keys() を使うと一覧できます。  しかし Symbolをキーにしたプロパティは、これらの列挙処理に含まれません。つまり「表には出ないけれど、確かに存在している」プロパティを作れるのです。

イティセル/コード専門官

要するに、for…in や Object.keys() を使っても Symbolキーは勝手に出てこないつまり、隠されたまま になるのです。

イティセル/コード専門官

user オブジェクトは、表には name: “Taro” と age: 20 を持っています。しかし、Symbol(“secret”) という特別な鍵を使うと、そこから “hidden-info” という隠し情報を取り出せるのです。

const secret = Symbol('secret');
const user = {
  name: 'Taro',
  age: 20,
  [secret]: 'hidden-info'
};
イティセル/コード専門官

for…in は 列挙可能な文字列キーだけを拾います。
実行結果は、name, ageになります。
要するに、Keyのみ拾ってるだけです。

for (const key in user) {
  console.log(key);
}
イティセル/コード専門官

これも文字列キーのみを返します。
実行結果は[‘name’, ‘age’]になります。
keysがあるので、[‘name’, ‘age’]だけですね。

console.log(Object.keys(user));
イティセル/コード専門官

こちらは Symbol キーだけを返します。
実行結果は [ Symbol(secret) ] です。

console.log(Object.getOwnPropertySymbols(user));
リクナ / JavaScript統括官

name, age
[‘name’, ‘age’]
[Symbol(secret)]

実行結果
name, age
['name', 'age']
[Symbol(secret)]
イティセル/コード専門官

つまり、Symbol キーのプロパティは裏ではちゃんと存在しているのです。  
もし「本当に動いているのか?」を確認したいなら、  
console.log(Object.getOwnPropertySymbols(user));  
を使えば、Symbol キーの一覧を確認できます。

3. Symbolの生成方法

3.1 通常の生成

イティセル/コード専門官

Symbol() は呼ぶたびに新しい“シリアル番号”を発行してくれる仕組みです。渡した文字列はあくまでメモ用のラベルであり、番号そのものには影響しません。
要するに、description は「製品名」のようなもので、実際には他と重複しないユニークな番号が自動的に割り振られるのです。

const sym = Symbol('description');

3.2 グローバルレジストリを使う

Symbol.for() を使うと、同じキーで生成したSymbolを共有できます。

イティセル/コード専門官

Symbol.for() は「グローバルレジストリ」と呼ばれる共有領域を参照します。
Symbol.keyFor(s1) を使えば、その Symbol がどのキーで登録されたものかを逆引きして確認することができます。

const s1 = Symbol.for("shared");
console.log(Symbol.keyFor(s1)); 
リクナ / JavaScript統括官

shared

実行結果
"shared"
イティセル/コード専門官

さらに、通常のSymbol() は呼ぶたびに新しい値を生成するため、同じ文字列を渡しても比較結果は false になります。
Symbol.for() を使えば同じキーで生成したものは共有されるので比較結果は true になります。

const s1 = Symbol.for('shared');
const s2 = Symbol.for('shared');
console.log(s1 === s2);
リクナ / JavaScript統括官

true

実行結果
true

4. 組み込みSymbolの活用

JavaScriptには「特別な意味を持つSymbol」がいくつも用意されています。

symbol.iteratorはイテレータを定義し、for…ofで利用可能にする

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5. 実務での活用シーン

ライブラリ設計:内部的な識別子を安全に管理

•  ライブラリ内部で使う「特別なフラグ」や「隠しプロパティ」を、通常の文字列キーで管理するとユーザーが同じ名  前を使って衝突する可能性があります。

•  そこで Symbol() を使えば、絶対に他と重複しないキーとして扱えるため、ライブラリ内部の実装を安全に保てます。

イティセル/コード専門官

Symbol() は衝突を避けてくれる優秀な仕組みです。
たとえるならゲームの世界で、弓矢を使うキャラクターと敵が同じ名前を持ってしまうと、敵なのに仲間として扱われてしまうような混乱が起きます。
しかし Symbol() を使えば、必ずユニークな識別子が割り振られるので、敵と味方を正しく区別でき、衝突による混乱を防げます。
ライブラリ設計でも同じで、ユーザーのコードと内部の識別子がぶつからないように安全に管理できるのです。

フレームワーク拡張:ユーザーコードと衝突しないメタ情報を保持

•  フレームワークはユーザーが書いたオブジェクトに「追加情報」を持たせたいことがあります。

•  例えば Vue や React の内部で「レンダリング用のメタ情報」を保持する場合、通常のキーだとユーザー定義とぶつかる危険があります。

•  Symbol を使えば、ユーザーが意識しない形で裏側に情報を持たせることが可能です。

イティセル/コード専門官

例えば、ユーザーが次のようなオブジェクトを定義したとします。

const user = { name: "イティセル", age: 15 };
イティセル/コード専門官

ここでフレームワークが “age” というキーを内部用に使ってしまうと、ユーザーの定義と衝突してしまいます。
そのまま実行させてみると…ぽちっ

user.age = { rendered: true };
console.log(user.age);
リクナ / JavaScript統括官

{ rendered: true }

実行結果
{ rendered: true }
イティセル/コード専門官

本来は 15 が入っているはずの age が、内部情報で上書きされてしまいました。これが「衝突」です。
しかし Symbol() を使えば、内部情報を別のレイヤーに分けて保持できるので、ユーザーのデータを壊さずに済みます。

const META = Symbol("meta");
user[META] = { rendered: true };
console.log(user.age);
リクナ / JavaScript統括官

15

実行結果
15
イティセル/コード専門官

こうすれば、ユーザーの name と age はそのまま保持されつつ、フレームワーク内部のメタ情報も安全に追加できます。

デバッグ:オブジェクトに一意のタグを付与して追跡

•  大規模なシステムでは「どのオブジェクトがどこで生成されたか」を追跡したい場面があります。

•  Symbol をタグとして付与すれば、他のプロパティと衝突せずに一意の識別子を持たせられるので、ログやデバッグで便利です。

イティセル/コード専門官

つまり、大量のコードの中で「このオブジェクトはどこで作られたものか?」を調べたいときに、Symbol を目印として付けておけば後から困りません。
オブジェクトを書いたら、必要に応じて Symbol でタグを付けることで、ユーザー定義のプロパティとは別枠で安全に追跡できます。

6. 注意点と限界

JSON.stringify() では Symbol プロパティは無視される

イティセル/コード専門官

JSON.stringify() はオブジェクトを JSON 文字列に変換する関数ですが、このとき Symbol キーで定義されたプロパティは出力されません。

これは JSON の仕様が「文字列キーのみ」を対象としているためです。そのため、データを外部に渡す用途では Symbol を利用することはできず、ログ出力や API 通信といった場面には不向きだといえます。

要するに、JSON.stringify() が対象にするのは「文字列キー」だけです。数字キーは自動的に文字列化されて残りますが、Symbol キーは完全に無視されます。

const id = Symbol("id");
const obj = { name: "イティセル", [id]: 123 };

console.log(JSON.stringify(obj));
リクナ / JavaScript統括官

{“name”:”イティセル”}

実行結果
{"name":"イティセル"}Symbol プロパティは無視される

完全なプライベート化には #private フィールドの方が適している

イティセル/コード専門官

Symbol を使えば「外部から意識されにくいプロパティ」を作ることはできますが、実際にはアクセス自体が可能です。たとえば obj[sym] と書けば、外部からでも値を取得できてしまいます。したがって、本当に「外部から触れられない」プライベートなフィールドを作りたい場合には、ES2022 以降で導入されたクラスの #private フィールドを利用する方が適しています。

要するに、Symbol はプロパティの衝突を避けるためには便利ですが、完全な隠蔽には向いていないのです。

class User {
  #secret = 123;
  getSecret() { return this.#secret; }
}

const u = new User();
console.log(u.getSecret());
console.log(u.#secret);
リクナ / JavaScript統括官

123
SyntaxError

実行結果
123
SyntaxError: 外部からはアクセス不可

過剰に使うと可読性が下がるため、用途を絞ることが重要

イティセル/コード専門官

Symbol はユニークで便利な仕組みですが、コードを読む人にとっては「そのキーが何を意味しているのか」が直感的に分かりにくいという欠点があります。特に大量の Symbol を使ってしまうと、デバッグや保守の際に「この Symbol はどんな役割なのか?」が把握しづらくなり、可読性が低下してしまいます。

そのため、Symbol を使う場面は「内部識別子」「メタ情報」「デバッグ用のタグ」などに限定するのが望ましく、通常のプロパティで十分に表現できる場合には文字列キーを使う方がコードの可読性を保ちやすいと言えます。

const FLAG_A = Symbol("A");
const FLAG_B = Symbol("B");
const FLAG_C = Symbol("C");
// …と増えすぎると、読み手が混乱する

コラム:実務でのインデックス活用を会話で学ぼう!

ITTI

以上がSymbolの説明でした。どう思いますか?

AIひろゆき

いや、普通に開発してる人は Symbol なんて使わなくても困らないんですよ。id とか meta って文字列キーで十分だし、JSON.stringify で消えるなら余計に面倒じゃないですか。  
でも優秀な人は“将来の衝突”とか“ライブラリ内部の安全性”まで考えるんですよね。だからこそ、表に出ないユニークなキーを持てる Symbol をちゃんと使う。結局、目先の便利さだけで判断する人と、長期的な保守性を見据える人の差が出るんですよね。

ITTI

つまり、将来のことを考えるとsymbolを使った方がいいですか?

AIひろゆき

まぁそういうことですね。短期的には文字列キーで十分なんですけど、長期的に見たら衝突しない識別子を持ってる方が安心なんですよ。結局、コードって一人で書いて終わりじゃなくて、何年もメンテされるし、いろんな人が触るわけじゃないですか。そうなると“今は困らない”より“将来困らない”を選ぶ人が優秀なんですよね。だから Symbol を知ってて、必要な場面でちゃんと使える人が、結果的に保守性の高いコードを書けるんですよね。

まとめ

今回の内容を通して、Symbol は「普段の開発では目立たないけれど、裏側で大きな役割を果たす存在」であることがよく分かりました。プリミティブ型の一員として常にユニークな値を生成できるため、プロパティキーの衝突を避けたり、隠し情報を安全に保持したりといった場面で強力に機能します。ライブラリ設計やフレームワーク拡張、デバッグタグの付与など、実務での活用シーンも具体的で、将来の保守性を考えると「知っていて損はない技術」だと感じました。

一方で、JSON.stringify で無視されることや完全なプライベート化には向かないこと、乱用すると可読性が下がるといった限界も明確になり、使いどころを見極める重要性も理解できました。要するに、Symbol は「隠れキャラ的な存在」であり、適切な場面で使いこなすことでコードの安全性と拡張性を高められる、開発者にとっての強力な武器だと言えるでしょう。

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最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

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この記事を書いた人

ITTIのアバター ITTI 運営長

私はフロントエンドエンジニアを目指す初心者で、ITパスポートを取得済みです。現在はCopilotを活用しながらAIや最新のIT技術を学び、日本の開発現場で求められるチーム開発やセキュリティの知識を吸収しています。学んだことはコードや仕組みを整理し、わかりやすく発信することで、同じ学びの途中にいる人たちの力になりたいと考えています。

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