ユイリカ C主任専門官C言語が誕生した理由は、OSを開発するためでした。
はじめに:C言語の存在感
C言語は1972年に誕生して以来、50年以上にわたって現役で使われ続けているプログラミング言語です。OS開発から組み込み、ゲーム、コンパイラ、さらには現代の多くの言語(C++、Java、Go、Rustなど)に影響を与えたその存在は、まさに「プログラミング言語の祖」とも言えるでしょう。
では、なぜC言語は生まれたのでしょうか?
1. C言語誕生の歴史的背景
1960年代末:コンピュータの多様化とアセンブリの限界
1960年代後半、コンピュータは各社が独自のアーキテクチャを持ち、ソフトウェアは特定のハードウェアに強く依存していました。プログラムは主にアセンブリ言語で書かれており、移植性がほぼゼロ。新しいマシンが出るたびに、ソフトウェアを一から書き直す必要がありました。



アセンブリ言語とは、コンピュータが直接理解する機械語(0と1の命令列)を、人間が少し読みやすい形にしたプログラミング言語です。
UNIXプロジェクトの始動
そんな中、AT&Tベル研究所のケン・トンプソンとデニス・リッチーらが、効率的で移植性の高いOSを目指してUNIXの開発を始めます。最初のUNIXはPDP-7というマシン上でアセンブリで書かれていましたが、すぐに限界が見えてきました。
2. C言語が解決しようとした課題
アセンブリの非効率性と保守性の低さ
アセンブリはマシンに最適化されている反面、可読性が低く、保守が困難です。また、ハードウェアが変わればすべて書き直し。これではOSの発展が妨げられてしまいます。
B言語の登場と限界
トンプソンは、BCPLという言語を簡略化したB言語を開発し、UNIXの一部をBで書き直しました。しかし、B言語は型の概念が弱く、構造体もなく、複雑な処理には不向きでした。
3. C言語の誕生と設計思想
C言語の誕生(1972年)
B言語の限界を補う形で、デニス・リッチーが開発したのがC言語です。構造体や型の導入、ポインタによる柔軟なメモリ操作など、システムプログラミングに必要な機能を最小限の構文で実現しました。
設計思想:「機械に近く、人間にも読める」
C言語は、アセンブリ並みにハードウェアを制御できる一方で、高水準言語としての抽象性も持ち合わせているのが特徴です。このバランスが、Cを唯一無二の存在にしました。



つまり、C言語はハードウェアを直接制御できるほど低レベルに近い一方で、構造体や関数といった抽象的な仕組みも備えているため、効率と可読性を両立した唯一無二の言語なのです。
4. C言語が与えた影響
UNIXのC化と世界への拡大
C言語で書き直されたUNIXは、移植性の高さから世界中の大学や企業に広まりました。UNIXの普及とともに、C言語もまた世界標準の地位を確立していきます。
後続言語への影響
C言語は、その後のプログラミング言語に計り知れない影響を与えました。C++はCを拡張してオブジェクト指向を導入した言語であり、JavaやC#もCの構文をベースにしています。さらにPythonも、標準的な実装であるCPythonがCで書かれているなど、Cの存在なくしては成り立たなかったと言えるでしょう。



つまり、C言語は「母なる言語」と呼ぶにふさわしい存在です。
5. 「やりにくい」と言われたC言語──それでも超優秀だった理由
C言語はしばしば「難しい」「バグを生みやすい」「初心者向けではない」と言われます。確かに、ポインタ操作やメモリ管理、型の扱いなど、開発者に多くの責任を課す設計になっています。
それでもCが選ばれ続ける理由
- 自由度の高さ=最適化の余地
- Cは「何でもできる」言語です。裏を返せば「何でも自分でやらなければならない」言語でもあります。
- しかしこの自由度こそが、ハードウェアに最適化されたコードを生み出す鍵となります。
- 抽象化しすぎない設計
- Cは「抽象化のしすぎ」を避け、人間と機械のちょうど中間に位置するよう設計されています。
- そのため、処理の裏側が見える。これは、システムの深い理解やトラブルシューティングにおいて非常に重要です。
- 教育的価値の高さ
- Cを学ぶことで、メモリの仕組みやCPUとのやりとり、コンパイラの動作など、コンピュータの本質に触れることができます。
- これは、より高水準な言語を使う際にも大きなアドバンテージになります。



つまり、C言語は何でも開発できる反面で、負担や責任は開発者に大きくのしかかります。
そのため、効率的な大量開発には向かない。
熟練者にとっては最高の性能を引き出せる道具となるんです。
「やりにくさ」は、設計思想の裏返し
C言語の「やりにくさ」は、開発者に自由と責任を与えるという設計思想の結果です。これは、現代の「安全で便利な言語」とは真逆のアプローチかもしれませんが、その分だけ深く、強く、速い。だからこそ、Cは今も「プロの道具」として生き続けているのです。



C言語は「やりにくい」と言われながらも、OSを生み出し、
後続の言語を育て、今も現役で使われ続けています。
まさに、現代プログラミングの母なる言語なのです。



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